「朝」には今日伝わっている文字(下記2.)とは別に、甲骨文字にも便宜的に「朝」と隷定される文字(下記1.)が存在する。
- 会意文字。「艸」(草)+「日」(太陽)+「月」から構成され、月がまだ出ている間に太陽が昇る明け方の様子を象る[字源 1]。「あさ」を意味する漢語{朝 /*traw/}を表す字。この文字は西周の時代に使われなくなり、後世には伝わっていない。
- 形声。「川」(または「水」)+音符「𠦝 /*TAW/」(1.の文字の略体)[字源 2]。「しお」を意味する漢語{潮 /*draw/}を表す字。のち仮借して「あさ」を意味する漢語{朝 /*traw/}に用いる。今日使われている「朝」という漢字は1.の文字ではなくこちらに由来する。
- 『説文解字』では「倝」+音符「舟」と説明されているが、これは誤った分析である。金文の形を見ればわかるように、「倝」とも「舟」とも関係が無い。
- ↑ 羅振玉 『増訂殷虚書契考釈』 東方学会、1927年、巻中6頁。
裘錫圭 『文字学概要』 商務印書館、1988年、129頁。
林志強等評注 『《文源》評注』 中国社会科学出版社、2017年、319頁。
- ↑ 季旭昇撰 『説文新証』 芸文印書館、2014年、540-541頁。