なり【形、態】
- 姿形。からだつき。
- 服装、身なり。
- その女は大層見窄らしいなりをしてゐましたが、非常に美しい、涼しい眼を持つた女でした。(芥川龍之介 『三つの指環』)
- (前置する語を受けて)その状態ないし状況。
- 小さくても姿勢の整ったのは、小さいなりにいいものです。(上村松園 『絵筆に描き残す亡びゆく美しさ』)
- 史料の渉猟や対比には、自分なりに慎重な用意をもってしたつもりである。(吉川英治 『随筆 新平家』)
- 日本に武士道があるように、北欧の乱世にはやはりそれなりの武士道があった。(寺田寅彦 『春寒』)
なり 【成り】
- 将棋で駒が成ること。
なり 【鳴り】
- 鳴ること。音を立てること。
なり
- (「するなり」の形で)するとすぐに。
- 今、このアトリエの壁に黄山谷の「伏波神祠詩巻」の冒頭の三句だけの写真がかかげられている。(略)人からもらった時一見するなり心をうたれて、すぐ壁にかかげたのである。(高村光太郎 『黄山谷について』)
- (「したなり」の形で)したまま、したきり。
- 並列、選択を表す。〜か〜か。〜や〜や。〜でも〜でも。
- 従って先生は対話の場合かなり無遠慮に露骨に突っ込んで来るにかかわらず、問題が自分なり相手なりの深みに触れて来ると、すぐに言葉を転じてしまう。(和辻哲郎 『夏目先生の追憶』)
- しかし、無遠慮に人ごとをかれこれいうことは、十分心遣いはしていても、大なり小なり人に迷惑のかからないわけはないと、これも察するにあまりはある。(北大路魯山人 『茶美生活』)
- でも。とか。でもよいから。なんでもいい、といったやや投げやりなニュアンスがある。
- それや、兄さへその気になつてくれれば、兄の世話は、「その人」に委せて、あたくしは、外へ出るなりなんなり出来ないこともありませんけれど(岸田國士 『温室の前』)
- 馬鈴薯は煮るなり焼くなり、そちらでいいようにして下さい。(久生十蘭 『ノンシャラン道中記 燕尾服の自殺 -ブルゴオニュの葡萄祭り-』)
なり
にありが約まったもの
- 断定を表す。である。だ。
- ~にある、~にいる。
- 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも(阿倍仲麻呂)
- 山越乃 風乎時自見 寐夜不落 家在妹乎 懸而小竹櫃(やまごしの かぜをときじみ ぬるよおちず いへなるいもを かけてしのひつ)(万葉集 第一巻 01/0006)
- 続柄を表す。
- 状態・性質を表す。
- (近世の用法)~という。
- 連体形接続
未然形 |
連用形 |
終止形 |
連体形 |
已然形 |
命令形
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なら |
なり |
なり |
なる |
なれ |
なれ
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に |
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未詳。定義1とは異なる可能性が高い。
- 伝聞、また推定する意味を表す。~のようだ。~らしい。~だそうだ。~ということだ。
- 男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて、するなり。(土佐日記)
- 男の人が書くとかいう日記というものを、女の私も書いてみようと思って、書くのである。
- 終止形接続
未然形 |
連用形 |
終止形 |
連体形 |
已然形 |
命令形
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○ |
なり |
なり |
なる |
なれ |
○
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